教授こと坂本龍一さんが他界されました。
私が教授とはじめてご一緒させていただいたのは1999年のこと。
『LIFE a ryuichi sakamoto opera 1999』という、オペラでした。
音楽はもちろんのこと、地球の環境について、自然について、平和について。
このオペラは、世界に発信されたメッセージでした。
教授との出逢いは、私の人生において大変大きな衝撃でした。
NHKスペシャル・シリーズ「変革の世紀」。
番組内の教授が手がけたサントラ音楽に、教授のピアノと私のクラリネットで、二重奏をさせていただくという大変光栄な機会を頂きました。
一日中ビクタースタジオで、教授と一緒にレコーディングさせていただくという贅沢な時間。
まだスタジオなどでの演奏経験の少ない私に、たくさんアドバイスくださいました。
「どんな音がつくりたい?」
「僕はね、息を吹き込んでリードが振動して音になる、人の息が音になった、そんな音がいいなあ」
実は、後になりCDができあがり、オンエアされた時に、ちょっとショックを受けました。
息を吸う音、微妙なタイミングのズレ、フィンガリングのキー音、ホールでは聞こえないはずのリードのノイズまでしっかり入っていました。
つまり、敢えて沢山の響きで誤魔化さず、真隣で耳を澄まして聴いているかのような、まるで裸のような録音だったからです。
通常ならたくさんの響きや修正などを加え、美しい音づくりをしてくれるレコーディング技術とは真逆の発想。
きっと教授は、私が出したかった表面的な美しくクリアな音ではなく、生きている人間の息づかいや鼓動までを感じられる、そんなクラリネットの音が欲しかったのではないかなと、今になって思ったり。
その後、教授とは映画音楽のレコーディングなど、色々な場面でご一緒する機会をいただきました。
私にとっては毎回毎回、身に余るような貴重な時間であり、、、
その録音は宝物となりました。
ご縁が重なり、ニューヨークへ伺った時には、教授が音楽をつくっているスタジオにお招きいただきました。
2001年9月11日、アメリカ同時多発テロ事件の直後。
マンハッタンのツインタワーが崩壊された直後のことでした。
教授はカメラを持ち現場へ向かったと、その時の壮絶な様子をお話ししてくださいました。
その後「非戦」という教授の本が出版され、直接プレゼントいただいたものが我が家に大切に在ります。
ニューヨークでは、ディナーまでご一緒させていただきました。
レストランで、お皿に乗った大きな植物のようなものがそのままドンと運ばれた時に、どうやっていただいたらよいのか迷っていたら、
「これ、知ってる?アンティチョークと言ってね、こうしてひとつづつちぎって、ディップをつけて食べると美味しいの。」
あの時教授に連れて行っていただいたレストランは、ニューヨークのナチュラルBIOレストランで、見たことの無いお野菜や、ナチュラルな美味しいお料理がテーブルに並んだような記憶があります。
体に取り入れる食について、野菜について、、、今思えば私の食へのこだわりなどのキッカケは、この時から始まったのかもしれません。
この辺りの写真が、きっと何処かにあるはずなんだけどな、、、。
教授、たくさんの素晴らしい時間を本当にありがとうございました。
教授からのメッセージ
『芸術は長く、人生は短し』